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遺伝       

福沢諭吉の残した「遺伝之能力」という文には

肺病、癩病、梅毒、癲狂(てんきょう)等の諸病は、親子相伝へ兄弟姉妹其(その)質を共にして之を免かるること難し

とあるそうです。
肺病、つまり肺結核は20世紀初頭まで遺伝病とされ、血縁者に結核患者がいることが知られると結婚できないので大変だったらしい、と母親から聞いたことがあります。今では伝染病であることを誰も疑ってはいません。
ハンセン病(ライ病)も結核の場合と同じ頃に伝染病であることが判明したそうですが、それでも日本ではなんと1997年までハンセン病に罹ったことのある人は子供を作ることが許されていませんでした。

遺伝子研究が急速に進んでいる現代でも「遺伝病」なのか、子孫に遺伝しない「先天性疾患」なのか、単なる「伝染病」なのか、判然としない病気がいろいろあるようです。だから私は「遺伝性ナントカ」という説を信じなくなっています。

しかし一つだけ例外があります。

貧乏してしまうという体質、見栄っぱり、根性なし、自堕落、自制心のないこと、浪費など、そういった性情は、あきらかに(全部ではないが)子孫に伝わっていく。すなわち、肺病は遺伝ではないが、貧乏は遺伝するのである。
(中略)私は、断じて貧乏は遺伝すると考えている。

この説だけは信じています。
私の大好きな山口瞳の、私の大好きな「血族」の一節です。
by convenientF | 2008-05-01 15:50